交通遺児育英会について


1.事業概要

交通遺児育英会は、道路における交通事故が原因で死亡した方や著しい後遺障がいのある方の子女などのうち、経済的な理由で修学が困難な方に学資を貸与して、教育の機会均等を図り、社会有用の人材を育成することを目的としています。

奨学金の貸与

高校・大学・大学院・専修学校・各種学校に学ぶ方々に奨学金を無利子で貸与しています。財団設立以来、奨学金の貸与を受けた方々は5万人以上にのぼります。
奨学生の募集には、進学前に奨学金の貸与を予約する予約募集(高校・大学・専修学校・各種学校)と、進学後に申し込む在学募集があります。
奨学金の種類は月々の奨学金の他に、入学一時金、進学準備金(大学・専門学校進学予定者のみ)があり、貸与金額はそれぞれ3種類の中からの選択制となっています。また他の奨学生制度と併せて利用することもできます。

奨学生の指導・育成

本会は、指導・教育活動として学業成績および生活状況に関する指導、「つどい」、「海外語学研修」等を行っています。
「つどい」は、交通遺児家庭という同じ境遇の親子が一堂に会し、進路、悩み、夢などを語り合い、互いに触発され勇気づけられる場となっています。また、進学・就職、奨学金の貸与・返還などの当面する問題を、奨学生、保護者、本会職員の三者で個別に話し合う場も設けています。
「海外語学研修」は、英会話能力の向上と国際化時代に対応できる人材を育成するための動機づけを目的として、実施しています。

学生寮「心塾」の運営

地方出身の方も、経済的、精神的に安心して大都市圏の大学などに通えるように、学生寮「心塾」を東京と関西に開設しています。
「心塾」では規律ある生活、各種の講座などを通じて、「温かい心・広い視野・行動力」を養うことを目標としています。

修学支援金の給付

以下の給付制度があります。
  1. 心塾に在籍せず賃貸住居に居住し、自宅外から通学する本会奨学生(高校奨学生を除く)に対し、経済的負担の軽減を通して修学を支援するため、月額1万5千円の家賃補助を行っています。
  2. 本会の高校奨学生で大学、専修学校専門課程、各種学校を受験する方に、受験料の補助を行っています。給付額は受験料の合計額で上限5万円です。
  3. 本会の奨学生を対象として、「普通自動車第一種運転免許」および「準中型自動車第一種運転免許」の取得費用の半額補助を行っています(上限15万円)。

2.財団のあゆみ

設立の経緯

昭和30年代以降の日本の高度経済成長は、国民の生活を豊かにし、その繁栄の一つの姿としてモータリゼーションの時代を招来したが、一方で交通事故死者数の増加という大きな負の遺産をもたらした。

1961年(昭和36年)新潟のある町で酔っ払いトラックが買い物帰りの母子をひき、そのまま二人を引きずって死に至らせ、逃亡するという悲惨な事故があった。この事故で亡くなった母親に弟が一人いた。これが1967年(昭和42年)に自分と同じような境遇にある交通遺児たちへ励ましの活動をする「交通事故遺児を励ます会」を立ち上げた岡嶋信治氏である。

「交通事故遺児を励ます会」は、街頭募金やチャリティーショー、チャリティーバザーなどで交通遺児の窮状を訴えるかたわら、遺児家庭を訪問して実態を調査。一様に生活苦にさいなまれている各家庭の母親が「子供を高校にだけは進学させたい」と訴えていることを知り、その救済策の一つとして育英事業の実現を目標に活動を続けた。

この活動に政府も動かされ、同様の全国調査に乗り出した。
1968年(昭和43年)11月の政府発表の調査結果は交通事故遺児を励ます会の運動目標である育英事業の必要性を裏付けるものとなった。この結果を受け国会で再三の議論がなされた。

同年12月の衆議院交通安全対策特別委員会では、「政府はすみやかに交通遺児の修学資金貸与などを行う財団法人の設立およびその法人の健全な事業活動を促進するため、必要な助成措置等について配慮すべき」旨の決議がなされ、その後の閣議で、この政府の方針は了承された。

1969年(昭和44年)3月31日「財団法人 交通遺児育英会」の設立総会が、東京・丸ノ内の東京会館で開催され、9月から全国の交通遺児高校生約3千人に、月5千円ずつの奨学金を貸与することを決めた。
この設立総会の決議に基づき、4月15日、東京都を通じ財団設立関係書類を提出。
5月2日総交第58号、委大第4の3号にて内閣総理大臣および文部大臣より財団設立を許可され、正式に「財団法人 交通遺児育英会」が発足した。

5月9日上記主務官庁の設立許可にともない東京・経団連会館で創立総会を開催する運びとなり、これに先立ち理事会を開き、顧問および評議員の選任を行い第1号議案「顧問および評議員の選出について」および第2号議案「日本自転車振興会および財団法人日本船舶振興会に対する補助金交付申請について」の両議案を決議。ただちに創立総会(理事会および評議員会)を開催、第1号議案「昭和44年度事業計画及び収支予算について」、第2号議案「奨学金貸与規程その他の規定の制定について」を全会一致で可決した。

5月20日、財団法人交通遺児育英会の登記が完了。税制上は寄付の税制優遇の対象となる「特定公益増進法人」である。
5月24日には総交第60号、委大第9の6号で奨学金貸与規程が承認され、奨学生採用の事業に着手した。

事務所は、東京都千代田区永田町1丁目11番28号に置かれ、会長・永野重雄、理事長・石井栄三、専務理事・玉井義臣、事務局長・森敬の体制でスタートした。事務局の陣容は、徐々に整備されるが、発足当初は専務理事以下8人であった。

この経過のごとく、財政基盤を固めることより設立が先行したきらいがあり、設立発起人(設立当初の役員)の人選とともに、並行して基金を集めねばならない苦しいスタートとなった。
初代会長に当時の富士製鐵社長の永野重雄氏が起用されたのには、人物はもちろんのことながら、基金形成の面で財界はもとより、政界、官界の広い人脈に期待する面があった。

設立時の役員は会長、理事長、専務理事各1名、常任理事8名、理事12名、監事3名、顧問17名である。
設立から現在までの各役員の就任時期と期間は下表のとおりである。


各役員の就任時期及び期間

設立当初、玉井専務理事をはじめとする常勤者のトップが財団経営未経験であったから、非常勤役員の理事長には、初代、2代目と官僚OBの石井栄三氏、宮崎清文氏が就き事務局を指導した。
設立から現在まで、この初代および2代目理事長以外役員ポストに官僚OBの就任はない。

事務局員についても同様で、設立来主務官庁OB数名が在籍し、その指導を受けたが、プロパー職員の成長により平成10年代初期に内閣府局長と交通遺児育英会穴吹専務理事で官僚OBの受け入れは止めることで合意し、平成15年度末に最後の官僚OBが定年退職して以降官僚OBはゼロである。

発足後順調な経営が続いたが、昭和57年ころから、玉井専務理事の主導で災害遺児育英募金や病気遺児育英運動が展開された。しかしながらこの運動は交通遺児育英会寄付行為に沿わない事業であることから、玉井専務理事は平成5年4月、災害・病気遺児育英のための任意団体あしなが育英会を設立、その副会長に就任し、平成6年3月の交通遺児育英会第50回理事会で専務理事を辞した。その理事会では、当面、当時の常勤理事事務局長を専務理事事務取扱として専務理事業務を代行させることとした。

このような経緯があり、約2年の専務理事不在期間の後、平成8年5月の第1回臨時理事会で新たな専務理事として穴吹俊士氏が選任された。

以後、理事会の活発な議論を背景として、5年単位の長期事業計画をベースにして立案された単年度の事業計画に従いひたすら交通遺児の修学支援策の充実を図ってきた。

年々の事業推進のベースとなった長期事業計画は以下のとおり4〜5年ごとにローリングを繰り返しつつ現在に至っている。

事業再構築計画:1999年〜2002年(平成11年〜平成14年)
・つどいの改革と再開
・業務の機械化・システム化の推進
第1次長期事業計画:2003年〜2006年(平成15年〜平成18年)
・指導事業の強化(高校奨学生海外語学研修の開始)
・募金・貸与・返還システムの改善
第2次長期事業計画:2007年〜2011年(平成19年〜平成23年)
・公益財団法人への移行
・旧運輸省からの自動車事故対策費補助金の早期返納
・財産管理等内部牽制機能の強化
第3次長期事業計画:2012年〜2015年(平成24年〜平成27年)
・返還滞納者対策推進
・知名度向上対策推進(2015年ACジャパン支援団体に選定された)
・心塾再建検討開始
・給付型修学支援事業開始
第4次長期事業計画:2016年〜2020年(平成28年〜令和 2年)
・給付型修学支援事業拡大
・奨学金貸与・返還システムの統合による効率と管理レベルの向上
・心塾東京寮の再建と再建までの効率的運営検討(プロジェクトチーム発足)
第5次長期事業計画:2021年〜2025年(令和 3年〜令和 7年)
・さらなる修学支援事業の充実
・奨学生指導・育成の強化
・新心塾東京寮の建て替え推進⇒新寮開設
・コロナ禍等の予期せぬ危機への対応策再考
・コロナ禍でのつどいに代わる交流の場の在り方検討と実施

〇2011年(平成23年)公益財団法人へ移行の経緯
1999年に事業再構築計画をスタートして間もなく、2000年(平成12年)から2008年(平成20年)にかけて、内閣官房(行政改革推進事務局)において公益法人制度の抜本的改革の検討が進められ、2006年(平成18年)3月公益法人制度改革関連三法案が閣議決定され、同年5月第164通常国会において法案が成立し、2008年12月1日に同法が施行された。
本会はこれに沿って、公益財団法人への移行認定申請を行い、2011年(平成23年)4月1日公益財団法人として認定を受けた。

〇修学支援事業強化の経緯
第3次長期事業計画の終盤、平成27年下期から給付型の修学支援として家賃補助を始めたが、以降自動車運転免許取得費用補助等を追加するなど、この給付型修学支援を充実させる一方で、生活保護者および住民税非課税者の返還免除等によって返還者の負荷軽減を進めてきた。
令和2年上期からは長年最大の目標として実現を目指してきた奨学金本体についての一部給付(月2万円)を開始した。
現在推進中の第5次長期事業計画では、さらなる給付型修学支援の充実と返還負荷軽減策の追求を重要課題としている。


設立以後の沿革

      
1969年(昭和44年)5月 財団法人「交通遺児育英会」設立
初代会長に永野重雄、初代理事長に石井栄三が就任
9月 高校奨学金を月額5,000円としてスタート
1970年(昭和45年)7月 高校奨学生の「つどい」始まる
1971年(昭和46年)3月 全国共済農業協同組合連合会が募集していた人形型募金箱の愛称が『さっちゃん』と決まる。佐藤栄作首相による命名。
1972年(昭和47年)3月 機関紙「君と581-2271」創刊号発行
1973年(昭和48年)4月 大学奨学金を月額20,000円としてスタート
1975年(昭和50年)8月 「褒章条例に関する内規」による「公益団体」に認定される
1977年(昭和52年)4月 大学院奨学金を月額50,000円としてスタート
1978年(昭和53年)4月 学生寮竣工(東京都日野市)「心塾(こころじゅく)」と命名
  第1回入塾式 41人入塾
  高校・大学「入学一時金」制度スタート
1979年(昭和54年)4月 「あしながおじさん奨学金制度」始まる
  「あしながおじさん2,000人募集キャンペーン」スタート
5月 「交通遺児育英会10年史」発刊
1980年(昭和55年)2月 学生寮「心塾」で第1回卒塾式 8人卒塾
1981年(昭和56年)4月 専修学校・各種学校奨学金を月額30,000円としてスタート
1982年(昭和57年)6月 「あしながおじさん」3,000人突破
1990年(平成2年) 4月 「交通遺児育英会20年史」発刊
1994年(平成6年) 3月 「心塾15年史」発刊
12月 高校奨学生の「つどい」中止を決定
2000年(平成12年)3月 「高校奨学生のつどい」を新たに「高校奨学生と保護者のつどい」として各地区ごとに復活開催
2001年(平成13年)7月 「高校奨学生と保護者の相談会」始まる
9月 機関紙の題号を「君とつばさ」に改題
2002年(平成14年)1月 ホームページ開設
4月 専修学校・各種学校「入学一時金」制度スタート
2004年(平成16年)4月 「あしながおじさん奨学金制度」満25周年
7月 「海外語学研修」スタート
高校奨学生29人が英国・ソールズベリーへ
2005年(平成17年)9月 学生寮心塾「関西寮」開設
2006年(平成18年)4月 学生寮心塾「関西寮」 第1回入塾式 7人入塾
10月 「進学準備金」制度スタート
2007年(平成19年)3月 「交通遺児育英会35年史」発刊
2008年(平成20年)5月 学生寮心塾「所沢寮」開設
2011年(平成23年)4月 「公益財団法人」に移行
2012年(平成24年)8月 地区ごとに開催してきた「高校奨学生と保護者のつどい」をこの年度から全国対象一括開催とした。(千葉市)
2013年(平成25年)8月 「高校奨学生と保護者のつどい」開催(東京都)
以降、開催地を東京とし、個別相談会も併せて実施
2014年(平成26年)11月 交通遺児家庭の生活実態に関するアンケート調査を開始
2015年(平成27年)3月 「交通遺児家庭の生活実態調査」報告書を発行
7月 「AC広告」第1弾スタート
10月 「家賃補助」制度スタート
2016年(平成28年)7月 「AC広告」第2弾スタート
2017年(平成29年)3月 交通遺児とその母親の思いを綴った小冊子「父の思い出を乗り越えて」を発行
4月 「上級学校進学受験費用補助」制度スタート
  「特別支援学校卒業生および生活保護受給者対象の返還免除」制度スタート
7月 「AC広告」第3弾スタート
2018年(平成30年)4月 「自動車運転免許取得費用補助」制度スタート
7月 「AC広告」第4弾スタート
2019年(令和元年) 5月 創立50周年
2020年(令和2年) 4月 奨学金の一部給付を開始(2万円/月)
  学生寮心塾「武蔵境寮」開設
6月 コロナ対応支援金一人一律20万円を全奨学生に対して給付
7月 コロナ禍により「海外語学研修」中止
8月 コロナ禍により「高校奨学生と保護者のつどい」中止
 12月 コロナ対応支援金(2回目)一人一律10万円を全奨学生に対して給付。
2021年(令和3年) 6月 コロナ対応支援金(3回目)一人一律10万円を全奨学生に対して給付。
7月 コロナ禍により「海外語学研修」中止
8月 コロナ禍により「高校奨学生と保護者のつどい」中止

3.組織機構図

組織機構図