募金をしようとしても「募金寄付」「義援金」など、似ている言葉が多く、何が違うのか気になる方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、寄付と寄附の違いや、義援金や募金といったお金を役立てる方法、メリット・デメリットについて考えます。ぜひ、最後までご覧ください。
寄付や募金の思想背景には「利他主義」や「共助」の精神が根ざしています。人間社会では、困っている人を助けることで社会全体の安定や発展が促されると考えられています。宗教的には、仏教の布施やキリスト教の慈善、イスラム教のザカートなど、他者への施しが徳とされてきました。近代以降は、人権意識や福祉国家の理念と結びつき、個人や企業が自発的に社会貢献する形が広まりました。寄付は自己満足ではなく、社会への責任と連帯を示す行為とされています。
皆さんの中には、街中やスーパー、コンビニなどの店頭で行われている募金に協力をしたことがある方もいるでしょう。
近年では、インターネットを通した募金も増えてきているため、さまざまな形態で募金ができ、より身近な存在となっています。
気軽に協力できることから、多くの方が行っている募金ですが、概要を詳しく知る人はそれほど多くないかもしれません。ここでは、募金とは何なのか、寄付・義援金・寄贈についても、詳しくご紹介していきます。
募金の意味は「お金を募り、集めること」です。「募る」とは、広い範囲で呼びかけたり、募集したりすることをいいます。元々、広く呼び掛けて「お金を集めること」が募金とされていましたが、現在では「募金活動に協力する」ことに変化してきています。
寄付とは、募金としてお金を集めている団体や組織に対し、無償で金銭や物品を渡して協力することをいいます。募金箱にお金を入れることを「募金をした」と表現することが多いですが、実は「寄付をした」というのが正しい使い方です。
「寄付」と「寄附」は似ていますが、使う場面が異なります。公的な機関や法律に関係する場所では、「寄附」が使われ、そのほかに場面では「寄付」が使われることが一般的です。「寄付」と「寄附」は文字が似ているだけでなく、読み方が同じであるため、中には同じものと認識している人もいます。また、「寄付」と「寄附」の2つの言葉が存在することは知っていても、違いについては知らないという人が多いかもしれません。
義援金とは、自然災害が起きた際、個人に対する支援として配られるお金のことをいいます。「寄付と同じでは?」と思うかもしれませんが、寄付と義援金とでは異なります。義援金は自然災害の被災者に対し、自治体などの組織を通して直接渡される点が特徴です。なお、寄付は個人ではなく、被災地で支援を行う団体に対するもので、個人に渡されるものではありません。
寄贈とは、学校や博物館などの公共性が高い施設へ、お金ではなく物品が渡されることをいいます。「寄付」と似ているため、混同してしまうかもしれません。しかし、寄付はお金と物品のどちらでも適用されるのに対し、寄贈は物品限定であることが特徴です。
「寄付」と聞くと、慈善活動の行為で、返礼がないというイメージが強いかもしれません。しかし、寄付によっては、税金が減額される「寄付金控除」を受けられるケースがあります。寄付金控除が適用されると節税になるため、詳しく見ていきましょう。
寄付金控除の対象となるかどうかは、寄付先がどのような団体であるかが関係しており、行政庁の認定を受けた公益法人、認定NPO法人等への寄付は寄付金控除が受けられます。個人での寄付の場合、寄付先が公益法人認定NPO法人等であれば、寄付金控除の対象となる場合があります。また、所得税の寄付金控除では「税額控除」と「所得控除」から選択できます。
税額控除の金額は、以下の数式で計算します。
(寄付金の合計額 - 2,000円)× 40% |
控除が受けられる寄付金額は、年間所得の40%までです。なお、控除される限度額は、所得税額の25%とされています。
所得控除の金額は、以下の数式で算出できます。
寄付金の合計額 - 2,000円 |
控除される限度額は、年間所得の40%です。また、居住する地域の自治体により、住民税も控除される場合があります。
寄付金控除は、確定申告を行うことで受けられます。ただし、職場で行われる年末調整では、寄付金控除が受けられないため、年末調整とは別に確定申告が必要です。確定申告は、寄付をした翌年の2月16日から3月16日までの期間に、税務署またはインターネットのe-taxで行います。確定申告には寄付をした証明が必要なので、証明書や領収書は確定申告まで保管しておいてください。また、証明書や領収書が発行されない寄付は、寄付金控除が受けられません。
確定申告は難しく感じるかもしれませんが、寄付金控除の申請は簡単です。税務署での確定申告は、確定申告書に手書きをする方法と、電子申告のe-taxで申請する方法があります。e-taxを利用する場合は、以下の流れで手続きを進めてください。
以上で、手続きは完了です。
所得控除か税額控除の選択については、所得税額が少なくなるよう自動的に選択されます。
募金や寄付をする場合は、それぞれにメリットとデメリットがあります。ここから詳しくご紹介するので、安心して募金や寄付をするためにも、参考にしてみてください。
募金や寄付をするに当たり、分かりやすいメリットがあるケースは少ないです。実際、募金や寄付をした人にメリットを聞いても、具体的に説明できないことも十分に考えられます。募金や寄付には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
募金や寄付をするメリットは、世の中の役に立てることです。社会で問題になっている大きな課題に対し、自分だけの力では社会を動かすことができなくても、募金や寄付によって貢献することができます。一人一人の募金や寄付が積み重なることで、やがて大きな力となり、課題の解決につながるでしょう。「人や社会の役に立てた」と誇らしく感じることも、募金や寄付をするメリットの一つです。
節税ができることも、メリットといえます。寄付金控除による節税として「ふるさと納税」が広く知られていますが、そのほかに「寄付金控除」が受けられる場合もあります。寄付金控除とは前述のとおり、国・地方団体・公益法人、認定NPO法人など、特定の寄付先が対象となり、所得税や住民税が減額される制度です。所得税や住民税は、所得金額に応じて課税金額が決まります。寄付金控除が適用されると、寄付を行った金額により、所得税や住民税が減額される仕組みです。
募金や寄付をすることで、寄付先の団体を応援できることもメリットでしょう。応援したい気持ちを寄付という形で示すことができ、一方、寄付先の団体はそのお金を活用できるため、社会貢献につながるケースが多いです。
募金や寄付はメリットのみならず、デメリットもあるので注意が必要です。中には、寄付をしたお金が本来の目的に使用されているかどうか、不明なケースが見られます。そうした不安から、寄付をためらう人も少なくありません。一方、WebサイトやSNSを通じて、寄付金の使い道を丁寧に報告している団体もあり、このような寄付先だと安心して支援できるでしょう。
デメリットでもご紹介したように、募金や寄付をしたお金が正当に使用されないケースがあることから、注意しなければなりません。ここでは、募金や寄付をする際の注意点をご紹介していきます。
表では募金と言いながら、実は詐欺である可能性に注意してください。過去には、実際にニュースで報道されたこともあります。これは、募金先の団体とは関係ない人が、街頭で募金を呼び掛ける手口です。本当に実在する団体が集めているものなのか、事前によく確認しましょう。また、詐欺の手口はほかにもあり、次々と新しい手口が出てくる可能性も考えられます。「ネットで見かけないから」「報道されていないから」大丈夫とは限りません。せっかくの善意を悪用されてしまわないよう、詐欺には十分気をつけてください。
詐欺に引っかからないためにも、寄付先が正しく募金活動をし、寄付金を活用できているかどうか、見極めなければなりません。「どこに寄付すれば安心なの?」「寄付先をどう選べばいいか分からない…」ここでは、そんな疑問に応えるべく、寄付先を選ぶコツをご紹介していきます。
WebサイトやSNSにおいて、寄付金の使途がきちんと報告されている団体だと安心です。寄付したお金がどのように使われているのか明記されていると、安心感が得られるだけでなく、自分のお金が役に立っているという満足感にもつながります。
寄付先のホームページで事業活動報告や収支決算報告がきちんと正しく報告されて、開示されていたら、安心して募金や寄付ができる団体の可能性が高いです。公益法人、認定NPO法人などは、行政庁の厳しい審査のもとで活動をしています。そのため、発信する内容に責任が求められます。
実績や活動歴をチェックし、日常的に活動内容が更新されていれば、寄付をしたお金は日々の活動に役立てられていると考えられます。インターネットでの情報更新がされていないなど、活発に活動している様子が見られない場合は、寄付をしたお金が正しく活用されているか、心配になってしまうかもしれません。
本記事では、募金と寄付の概要、寄付と寄附の違い、義援金などについて解説しました。近年、社会活動の一環として社会に貢献したいと考える人が増え、募金に関心を持つ方も多いです。しかし、実際に募金や寄付をしようとしても、種類や寄付先が多くて違いが分からず、結局どうすればいいのか迷ってしまうケースもあるかもしれません。まずは、募金や寄付の基本的な仕組みを理解し、それぞれの注意点を押さえてください。そして、自分に合った最適な方法で、大切なお金を社会の役に立てていきましょう。